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東京高等裁判所 昭和56年(行コ)86号 判決

控訴人(原告) 渡辺清太郎

被控訴人(被告) 新潟県公安委員会

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は、控訴人の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  控訴人

原判決を取消す。

被控訴人が控訴人に対し昭和五五年二月二九日付でした昭和四八年六月八日付許可番号一二八四八〇〇一五号の銃砲所持許可を取消す旨の処分はこれを取消す。

訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

二  被控訴人

主文同旨

第二主張

当事者双方の主張は、次のとおり付加するほか、原判決事実摘示と同一であるから、これを引用する(但し、原判決二枚目表六行目の「人」を「他人」と訂正する。)。

一  控訴人

1  上越連合会の結成は金田組の組織に対抗するためではなく、中津川組自体の内部的統制がとれていないため組員が無暴な行為に走り、他組織の組員と抗争を起すことがないようにするためであり、したがつて、上越連合会と金田組との対立抗争が底流として存在しているということはない。

2  従前主張したとおり控訴人が本件処分を受ける具体的理由はなく、本件処分は、控訴人が渡辺組組長、上越連合会総長で暴力団組織に関係しているというだけでされたものであり、ひつきよう控訴人をその社会的地位に基づいて差別するものであつて、法の下における平等の精神に反する。

3  新潟県内において組長として一家を名乗つている者で銃砲所持の許可を持つている者が控訴人以外にもおり、もし控訴人が銃砲を所持していることが他人の生命などを害するおそれがあるとして所持の許可が取消されるべきであるとするならば、右の者についても所持の許可が取消されてしかるべきである。しかるに、右の者について所持の許可が取消されていないにもかかわらず、控訴人に対しては所持の許可を取消すということは、処分の公平を欠くものであり、本件処分は恣意的判断に基づく取消権行使の濫用であるといわなければならない。

二  被控訴人

控訴人が一3で主張する者は銃砲所持の許可の更新手続をとらなかつたため、該許可は昭和五六年一一月二日失効した。そもそも、本件処分がされた前後を通じ許可を受けて銃砲を所持していた暴力団構成員と目される者は、控訴人を含めて三人おり、そのうち控訴人以外の者のうち一人に対しては昭和五四年一二月一四日付で所持許可取消処分をし、右処分に対して提起された取消訴訟は昭和五六年九月二八日請求棄却の判決が言渡され、該判決は確定し、他の一名は前記のとおり更新手続をとらなかつたため所持許可が失効したという事情にあり、したがつて、被控訴人が控訴人に対してした本件処分が公平を欠き、恣意的に権限を行使したとする控訴人の主張は当らない。

第三証拠〈省略〉

理由

当裁判所も、控訴人の本訴請求は、これを棄却すべきものと判断するが、その理由については、左に付加、訂正するほか、原判決がその理由において説示するところと同一であるから、これを引用する。

(原判決理由説示を訂正、付加する点)

原判決五枚目裏一二行目の「原告本人尋問の結果」を「原審及び当審における控訴人本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨」と訂正し、同六枚目裏五行目の「以後」の次に「控訴人が別の射撃銃一丁について所持許可の更新の申請をした昭和五四年一二月二五日までの間」を、同七枚目表六行目の「が認められ、」の次に「原審及び当審における控訴人本人の供述中右認定に反する部分は信用できず、他に」をそれぞれ加入する。

(控訴人の当審における主張について)

1  上越連合会結成の目的が中津川組の内部を統制することのみにあつた旨の控訴人の主張に添うような当審における控訴人本人の供述はそのまま信用することはできず、したがつて、右主張に立脚して、上越連合会と金田組との対立抗争が底流として存在していることはないとする控訴人の主張は採用できない。

2  本件処分は前説示のような具体的理由に基づくものであり、単に控訴人が暴力団の長であるということのみを根拠とするものであるから、本件処分が法の下における平等の精神に反する旨の控訴人の主張はその前提において失当である。

3  成立に争いのない乙第五号証、第六号証の一、二及び弁論の全趣旨によれば、本件処分の前後において許可を得て銃砲を所持していた暴力団構成員と目される者に対する当該許可の帰すうは被控訴人の主張(本判決事実摘示第二の二参照)のとおりであることが認められ、右認定に反する証拠はない。それ故、右と異なる前提に立つて、本件処分の効力を争う控訴人の主張は採用できない。

以上の次第で、控訴人の本訴請求は、これを失当として棄却すべきであり、これと同旨の原判決は相当であつて、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、控訴費用の負担につき民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 蕪山厳 安国種彦 塩谷雄)

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